呪いの時代(内田 樹)

いつまで待ってもFinal Cut Proのアップデートが完了しないので、読んだ本についてメモを残します。寝ればいいものを。眠いから論旨はまとまりません、たぶん。


この本、ほとんど著者について予備知識のないまま購入しました。結果としては概ねシングルヒットのレベルという感想。
生まれてこの方38年間、「呪い」というのは至極スピリチュアルなレベルで、且つ誰かが誰かに対して行うものとして捉えていたのだけれども、このほんの切り口は結構僕にとって斬新だった。
現代を「呪いの時代」として切り取った著者の基本的なプロットはこうだ。

  • 現代における呪いの言葉、すなわち他者を誹謗中傷する流れが蔓延している理由は、「壊すことは、作り上げることに比べあまりに簡単」という事が起因している。作り上げで他人を打ち負かすより、壊して打ち負かした方が簡単。
  • では、なぜ他人の作り上げたものを壊してまで勝つ必要があるのかと言えば、世の中に「今の自分が置かれている立場は不遇だ」と思う人が多いから。
  • なぜ多いのか。教育現場にかつて存在していた機能が失われたから。教育の機能とは本来、以下の2つを教える事。「君には無限の可能性がある」、それと同時に「君が持つ資源は有限だ」。つまり、可能性を抱きつつ身の丈を知れ、という事。この中から、人の有限性を教える機能が欠落している。
  • 自分の資源が有限であることを知らされぬまま育った子供達、というか自分の有限性を見せつけられる経験を経ずに育った子供達は、自分が持つ無限の可能性を信じるが故、自分が置かれた立場を「不遇だ」と感じる。その責任を他者や社会に求める。
  • 正攻法では勝てない。だから他人が作ったものを壊す、カタルシスで充足感を得る。
  • でも、それは自らを呪う行為である事に気づいていない。
  • 自らを呪う行為?
  • 社会システムを壊す事は、それを作る事に比べあまりに簡単。翻れば、社会システムを作る事は、それを壊す事に比べればあまりに困難ということ。そうやって、共通資源である社会システムが次々と破壊された結果、社会全体が衰退していく。
  • これが「呪いの時代」
  • 身の丈を知れ、そして有限な自分を愛してあげなさい。それが唯一の解決方法。


まあ、的外れかもしれないけど、僕はそんな風に理解した。


関係ないかもしれないが、最近の高校受験のシステムが気に入らない。内申点を重視するそうな。つまり、中学一年生から受験戦争は始まっているわけだ。
点数はもちろん、宿題の提出率や授業態度、卑近に言えば授業中に何回手を挙げたかが重視される。冗談のような話だけど、実際に授業中の挙手回数をカウントしている先生もいるとの事で、こうなると笑い事では済まされない。
僕なんて、今の時代に中学生だったら完全にアウトだ。宿題なんて殆どやらなかったし、気に入らない授業はまともに受けなかった。でも、そんな甘い反抗心を持っていてもなんとかなるのは、結局のところ学校は、実力(というのはテストの点数の事だけど)という絶対無比な尺度で成果を図っていたから。「要は、テストで良い点数取りゃいいんだろ?」というつっぱり方ができたわけだ。
でも、今はそれが認められない。こつこつやってる奴が偉いのだ。


いや、こつこつやる事の重要性を軽んじているわけじゃないよ。それ大事。でも、こつこつやるという行為そのものが偉いわけじゃない。こつこつやる事が、コンスタントな成果を出すための重要なファクターだと言ってるわけ。
勘違いしちゃいけないのはそこ。一番大切なのは成果を出すこと、つまり結果であって、そのプロセスは個人的には大切な資源や経験かもしれないけど、他者との関係の中ではあまり大切じゃないってこと。それが今の受験システムでは軽視されている。


僕等大人が、「こつこつやってれば、必ず報われる」って社会を提供できるなら話は別。でも、そんな社会を提供できてないわけじゃない?
だったら、それに向けた受験システムで、ちゃんと子供達に覚悟を持たせてやらないと。と思う訳です。


だって、会社で自分の同僚がヘマこいて、そのフォローに巻き込まれて徹夜してる時に、「俺の実力不足でこんな事に巻き込んですまん」と言われるのと、「俺だって頑張ってたんだよなぁ・・・」とか言い訳されるのとどっちが良い?言い訳されたら、はらわた煮えくり返らないですか?頑張ってりゃいいのかよ、と。
僕は実際、はるか昔にこれをやられて、しばらく口を聞かなかったもんなあ。こうなる前に言ってくれよ、「努力しているが足りないって」って思ったもんなあ。
個人のできる限界と、成果を出せる仕事量ってのは全く別物なんだから。自分の有限性を知らず、可能性の無限性だけ信じるから、こういう結果になるのだろうに。


いやー、全く違う話になっちゃったなあ。思った事を思った時に記事にしないから、こういう混同が起きるのだろうな。僕もぼちぼち、自分の有限性を認めないといけないな。


さて、アップデート終わった。いずれにしてももう眠いし、もう3時間後には起きなきゃならないし、体力も時間も実力も有限なわけだから、もう寝る事にしよう。