Final Cut Pro Xのバージョンアップに伴うクラッシュをどう回避したか

備忘録です。
ほんとはFinal Cutなんて触ってる場合じゃないんだけどなあ。。。

Final Cut Pro Xが10.0.3にバージョンアップ

従来のFCPユーザからは、わりと悪名の高いこのソフト。僕はわりと気に入っているんだけど、どうにもこうにもレンダリングのスピードが遅いのと、メモリの管理がへたっぴで、そこには辟易していた。
以前のバージョンがどうかは知らないけど、いかんせんメモリを使いすぎるし、どうやら作業後にメモリを解放しない。10分も起動していると、すぐに利用可能なメモリ空間が23.5MBとかになっちゃう。一応、このソフト導入後にメモリは8GBまで増設したので、これはちょっといただけない。メモリクリーナー系のソフトと併用して対応するんだけど、この手のソフトは万能じゃないから、たまに必要なメモリまで消してアプリがアボートする。要らないところで時間を浪費する。


そんな中登場した新バージョン。処理速度の全体的な向上が図られているとの触れ込みで、なにせ「全てのユーザにお勧め」だってんだから、やらないわけにはいかない。バージョンアップ後はプロジェクトファイルの移行が必要で、移行後は前バージョンでは利用できない、ってのが少し気になったけど、とにかく飛びついた。

バージョンアップ/移行成功。動作はキビキビに

アップデータは1.5GBとかべらぼうな大きさで大層時間がかかったけど、バージョンアップ作業もプロジェクトの移行もスムースに完了。動作はキビキビになったので、とても満足していた。

不具合発生

移行した次の日、少しいじっていたら異常終了した。ま、異常終了自体は以前のバージョンでも結構発生していたし、あまり気にしなかった。でも、その異常終了後から、次第にFinal Cutの挙動がおかしくなりはじめる。


まず最初に発生したのが、テロップの挙動不具合。単純コピーしたテロップの動作が、コピー元の動作と違う。
今制作しているムービーでは、計100人のインタビューを載せているので、視聴者がインタビュー内容に専念できるよう、テロップの動きや画面の挙動はフォーマット化して統一しているんだけど、これが崩れてしまった。


次に発生したのが、レンダリングファイルの不具合。何度レンダリングしても、アプリを再起動するとレンダリング結果が綺麗に消えてしまっている。レンダリングには結構な時間を食うので、これには辟易した。


そして、一番の問題。
すごい勢いでファイルスペースが食われて行く。バージョンアップ前には30GB程の空きスペースがあったハードディスクが、気がつけば残り235MBまで逼迫してしまった。内蔵ハードディスクの空き容量を確保しようにも、進行中の作業が多すぎてファイルを外出しできない。仕方なくディスククリーンアップ系のアプリで不要ファイルを削除した。


そして恐らく、この作業が不具合を決定的にした。

遂に起動しなくなる

ディスククリーンアップにおいて、PowerPCネイティブのレガシーコードを削除する機能があった。Lionではこの手のレガシーコードが使用できないため、そのユーティリティでは「安全に消去できる」と豪語していた。さすがに少し躊躇したのだけど、デフォルトで消去にチェックが入っていた事と、これにより削減できるファイル領域が結構魅力的で、ついつい削除を行ってしまった。


そしてこの作業後、Final Cutが起動しなくなった。
ローディング自体は行うのだが、プロジェクトファイルの読み込み段階で原因不明のエラーでアボートする。
再起動してもディスクユーティリティでディスクを修復しても、まったく改善されず。
更に起動すると、一旦移行が完了していた筈のプロジェクトファイルの移行を迫られる。移行してもしなくても状況は変わらず。完全に死亡状態。
ここでもう既に僕は涙目になっていた。なにぶん他の仕事が逼迫していて、ここに資源を投入するわけにはいかないのだ。かといって、このDVD制作には期限がある。なんとまあ、よせば良いのに今月末。仮にFinal Cut自体が復旧したとしても、プロジェクトファイルが破壊されていたら一巻の終わり。もう全てを再編集している余裕は無い。だいたい、ここまでに一体どれだけの時間を割いたと思ってんだよ?!

思考停止

もしかしたら原因はディスクの容量不足にあるかもしれないと思ったのだけど、なにぶんその時点でいたのはいつもの喫茶店。退避すべきハードディスクは自宅にあってできない。
思考停止して、他の仕事をはじめる。一緒にDVDを企画している人に、「覚悟しておいてくれ」というメールを作成したけど、とりあえず送信はやめておいた。

自宅に帰宅し、少し作業を開始

復旧のために僕が取ったのは、こんな作業。

ハードディスク領域の確保
すぐには要らないファイルを、片っ端から外付けHDDに退避した。これで20GB程度の容量は確保したが現象は変わらず

Final Cutの再インストール
以下の手順で再インストールをした。
・アプリケーションフォルダからFinal Cutを削除
App StoreでFinal Cutを選択、「インストール」ボタンを押下しインストール作業を実施
ちなみにこの作業、結構勇気が必要だった。
まず、再度課金される可能性と闘う必要がある。
次に、再インストール後にプロジェクトファイルをちゃんと認識してくれるかわからない。
そもそも、再インストールにより、プロジェクトファイルが初期化されていまう可能性も否めない。
とりあえず、この作業前にはじめてTime Capsulを利用したのは言うまでもない。


結果としては、想定していた悪いシナリオはどれも発生せず、無事にインストール完了。
状況は若干だが改善した。
今まではブート画面でアボートしていたのだが、再インストール後はメイン画面が開くようになった。しかし、やはりプロジェクトをタイムラインに読み込む最中にアボートする。

Lion再インストールの準備、そして唐突な復旧

いやー、これはとうとうOSの再インストールか?この時点では、そう考えていた。
原因がレガシーコードの削除にあり、アボートが改善されつつも完全復旧しないとすれば、原因はLionの中にあったレガシーコードを削除してしまった事が原因だと考えたからだ。
後から考えれば、原理的にそんなことあり得ないんだけど(だって、レガシーコードが動かないOSのインストールパッケージにレガシーコードがあるわけないから)、結構テンパっていたので、そう考えていた。


でも、これって超めんどくさいし、危険が伴うのよね。だって、アプリを全て再インストールする必要があるし、仮にそれが失敗したら、他の仕事までたち行かなくなるもの。ボランティアでやってる仕事が原因で、委託業務を破壊するわけには行かないもの。


てな感じでイライラムカムカしながら、他の仕事をしていた。
で、それが大体片付いた午前3時、ふと「あ、とりあえずプロェジェクトファイルを切り離したら起動だけはするのかな?」と思い立った。もし、プロジェクトファイルの一部に原因があるのであれば、部分的に復旧できるんじゃないかと思ったのだ。
そんなわけで、以下の作業を実施

・Users→(ユーザ名)→Movies配下にある「Final Cut Projects」「Final Cut Events」のフォルダをリネームする(これでFinal Cutがデータを認識しなくなると予想)
・Final Cutを起動


動いた!


次に現象を再現し、不具合個所の切り分けを行おうと思い、リネームしたフォルダ名を元に戻し、Final Cutを再起動。


(なぜか)動いた!!!!


すかさずイベントファイル全てを外付けHDDにコピーし、今に至る。


実際のところ、ちゃんと完全復旧してんのかはわからないけど、確認した限り大丈夫みたいだ。


今回の不具合により、寿命は確実に縮んだ。
Appleに金を払えとは言わないけど、今後の素晴らしいバージョンアップにより、この損失を補填してもらいたいものだす。