PRIDE 池袋ウエストゲートパークX

ありがたいことに年明けからの新規開拓業務が半ば内定しているので、元日の夜から仕事を開始してます。今回の仕事も相変わらずICT関連だけれども、少し今までとは違う毛色の分野なもんで、かなりの予習が必要なんです。
そんなわけで本日、千葉ニュータウンの大型書店に出向いて専門書を何冊も購入してきました。その際、新刊コーナーでこの本を発見してしまい、抵抗虚しく購入。専門書そっちのけで読破してしまいました。明日から頑張らないとな。
 
さてこのIWGPシリーズは、その時々の社会問題やトレンドを確信犯的にストーリーへ取り込んでいくことが大きな特徴となっている。今回はざっとリストアップするとこんなところ。

言うまでもないことだけれども、このうちの半分は年月が経てば意味すらもわからなくなるのだろうが、それらに振り回される人間たちは、トレンドの移り変わりほどには変わっていないようです。というより、第1作目に描かれていた池袋の状況が、10年をかけて全国に拡大していったという方が正しいかもしれない。
 
世相やトレンドがこのシリーズの舞台装置だとすれば、このシリーズのテーマはトラブルシューター真島誠の、世界との向き合い方だろう。
本巻ではついにというか、それを象徴する言葉が表題作になっている。すなわち『プライド』。恒例となっている冒頭のモノローグで、誠はこんなことを言っています。

最悪の経験に傷ついて、自分を呪い、なにもできなくなった人間が、自分の一番深いところから育てる力。それこそがほんもののプライドだって、プライドなどかけらもないおれにもよくわかった。もともと弱いやつがよりどころにする最後の盾がPRIDEなのだ。この盾を甘く見ないほうがいい。どんな力にもすり潰されないダイヤモンドのような光。それを心の底にもってるやつが、最後に勝つことになる。人生は結局、金や知識や腕力じゃ決まらないって、実に単純な話。

この一言が「現実を見据えていない若造の戯れ言」でない事は、この後に続くストーリーを読めばわかる。現実を見据えた重い一言なのだ。
 
おそらくこのシリーズは、誠によるモノローグの形を取った、石田衣良からのメッセージなんだろう。続けて語る誠の言葉に、それが滲み出ている。

目のまえにある仕事にガッツをだしてとりくめ。心が折れそうになったら、とりあえずちょっと休め。だが、決してあきらめるな。
最低の人間にも幸運は必ずやってくる。プライドを胸に、どんなに攻められても耐え抜け。チャンスはくる。そのときは思い切りシュートを決めてやれ。

 
不況だの格差だの勝ち組だの負け組だのと、何かと世知辛い世の中ですが、このぐらいの暑苦しい思いで戦い続けていくことが、大人が子どもたちのためにしてやらなければならない使命なんだと思います。
 
心が折れそうになったら、とりあえずちょっと休め。だが、決してあきらめるな。
 
大人も大変ですねえ。
 
 
このシリーズの最後に、今までにはなかったストーリーの転機が訪れるのだけど、それは読んでのお楽しみ。少し意外だったけれども、石田衣良も10巻戦った誠と崇に、目に見える形で安息を与えてやりたかったんだろうなあと思う。

PRIDE(プライド)―池袋ウエストゲートパーク<10>

PRIDE(プライド)―池袋ウエストゲートパーク<10>